この時代が生み出した「へんてこなる何か」

ネット上での人気やグッズの売上を見る限り、現時点での「ご当地キャラ」のツートップは「くまモン」と「ふなっしー」である。
くまモン公式サイト
http://kumamon-official.jp/
ふなっしー公式サイト
http://terawarosu.jimdo.com/


ふなっしー 2012年10月6日撮影

いまや日本を代表するマスコットキャラクターの「財」としての所有形態が、「総有」(地方自治体)と「私有」(個人)というのも興味深い。最近は、商店街(商店会)や地域活動団体などが、自治体から公認を受けてマスコットキャラクターによる地域活動を展開する事例も増えている。
☆逆井商店会青年部ブログ
http://ameblo.jp/sakasai-1/
唐ワンくんのブログ
http://ameblo.jp/karawankun/


▲さかサイ君 2013年7月15日撮影


唐ワンくん 唐津市提供

こちらは会員や構成員の「共有」ということになるが、着ぐるみ制作費や運営費の全部ないし一部に、都道府県や市区町村等を窓口にする公的助成金や補助事業を導入するケースも多く、全体として日本型「コモンズ」(=「入会(いりあい)」)の要素を併せ持つため、「総有」に近いと捉えていいかもしれない。

さらに私有・共有・総有といった財の所有形態にこだわらず、これを地域の再生・発展・活性化のツールとしてみれば、概念として「社会的共通資本」の定義である「ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような自然環境や社会的装置」に近いかもしれない。
☆社会的共通資本(PDF)
http://www.af-info.or.jp/blueplanet/doc/slide/2009slide-uzawa.pdf

「かもしれない」としたのは、最近になって個人や企業の参入が相次いでいるからだ。日本型の「コモンズ」を考える上でも、この動きは逆に面白い。

なぜなら「ご当地キャラ」を名乗った瞬間に、たとえ本人にその意思や知識がなくとも、「コミュニティビジネス」や「地域貢献」といったかたちで、「地域」を背負うビジネスモデルないし活動に転じるからである。

もちろん例外もある。たとえば「一平くん」は公式サイトやツイッターのプロフィールなどで「ゆるキャラではない」と明言している。ここでの「ゆるキャラ」は、その言い換えである「ご当地キャラ」の意味に受け取っていいだろう。なるほど、一平くんの活動は「地域」の枠に収まらないくらいに自由だ。
☆一平くん公式サイト
http://ippei-kun.com/


▲【21世紀フロッグス】ゲコリのうた《一平くん》

さて、以上は落語でいうところの「噺の枕」である。

ゆるキャラ」や「ご当地キャラ(クター)」と呼ばれる日本のローカルマスコット。だが、東京都内の区役所(行政職)と日本青年館(は1925年に全国の「青年団」のための施設として開館)の両方に勤務した経験を持つ僕には、この時代の地方自治体の懐事情や地域・個人の実情を背景に生まれた「へんてこなる何か」としか思えない。

先に言っておくと、僕はマスコットキャラクターを好きか嫌いかと問われたら好きだと答えるが、いわゆる「ファン」ではない。一番の関心事は「何故生み出されたのか」という背景だし、興味があるのは「何故そこに存在しているのか」という誕生譚である。

マスコットキャラクターのファンの方には申し訳ないが、「かわいい」とか「癒される」とか、見る側の個人的な思いには、いまのところ、あまり興味がない。また、僕はファンブックに書かれているようなことは書けないし、書く努力をするつもりもない。

僕自身は、せいぜい物好きな人の何かの役に立てばそれでいいと考えている。

何はともあれ、この時代が生み出した「へんてこなる何か」を、パッシブかつディープに楽しんでいただけたら幸いです。